7.5-2 超・超・超レアケース

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S.T.Y.X.研究所 – 会議室

マレウスリハビリ?
イデアそ、そう。
魔法士の安全な暮らしと活動を守る、
魔法技術研究所『S.T.Y.X.』としては……
オーバーブロット経験者の社会復帰のため、
アフターフォローもせにゃイカンわけですわ。
検査終わって、はい解散!
って野に放って、即暴走!とか避けたいの。
あらゆる角度から、君たちを元の環境に帰して
大丈夫かどうかの安全確認が必要ってこと。OK?
マレウスああ、理解した。
リリアそれで、わしらは何をすればいいんじゃ?
イデアえ、えっと……
き、君たちの精密検査の結果、ふたりの魔法の
波長がかなり似通っていることがわかったんだ。
リリア魔法の波長が似通っている?
イデアうん。そ、それも同一人物レベルにね……。
リリアありえん。同じ妖精とはいえ、わしはコウモリ、
マレウスはドラゴンじゃぞ。
イデアお、仰るとおり。
そもそも魔力回路はたとえ血縁者であっても全く
同じになることはありえない。指紋と同じようにね。
で、原因調査のためにナイトレイブンカレッジ入学時
のマレウス氏とリリア氏の魔法診断書と照合した結果
マレウス氏の波長にはほぼ変化なし。別人レベルに
変化してたのはリリア氏のほうだった。
リリアわし? 特に違和感も不調もないんじゃが。
マレウス僕の魔力を大量に浴びたせいで、
一時的に変化しているだけではないのか?
イデア妖精に魔力の説明をするのは、
プロに講釈垂れるみたいでなんなんですが……
魔力っていうのはエネルギー自体に
血液型みたいな分類や性質はない。
だから他人や、魔法道具なんかにも
力技で魔力を注入できる。
マレウス僕がシェーンハイトにしてやったことだな。
イデアそ、そう。でもマレウス氏が補填した魔力を使って
も、ヴィル氏の魔法は”ヴィル氏のもの”になる。
個性が出るのはエネルギーが術者の魔力回路を通り、
魔法として出力した時だからね。
でも、今のリリア氏は違う。
出力自体が”マレウス氏のもの”にかなり近い。
リリアそれは妙な話じゃ。何が原因なのだ?
イデアえ、えと……原因特定まではできていないけど、
『S.T.Y.X.』の見解は……。
マ、マレウス氏が角に溜め込んでいた膨大な魔力と、
シルバー氏が持っていた謎の魔法石が反応して……
リリア氏の魔力回路を変質させたんじゃないかと。
リリア……あの指輪には、どんな力が秘められていたのだ?
イデアシルバー氏の指輪に嵌まってた魔法石はあの時に
砕け散って、魔力自体を失っちゃったから……
あの石がどんな力を持っていて、
どう作用したのかは絶賛調査中なんですが。
マレウス魔力回路は指紋のように、
世界に2つと同じものはないのだろう?
イデアう、うん……だからこれは仮説の域を出ないけど、
うちの解析チームの中では……
『マレウス氏の角に通ってた魔力回路が、
そのままリリア氏に上書きされた説』が有力だ。
リリア・マレウス上書き?
マレウス魔力回路の上書き……そんなことが可能なのか?
リリア他人の魔力回路を上書きするなど、
わしも聞いたことがないぞ。
イデア人間の歴史の中で前例はない。
茨の谷にもあたってるけど……
現段階でドンピシャな既知の事例っていうのは
見つけられてないんすわ。
と、とにかく、超・超・超レアケースなのは
間違いない。
だから、君たちの詳細なデータを取りたいんだよね。
リリアこちらとしてもありがたい話だ。
マレウスの角がもとに戻るまでかなり時間がかかる。
専門家からのアドバイスがあれば、
より暮らしやすくなるじゃろう。
イデアじゃ早速、テストを開始しよう。
ふたりをシミュレーションルームに案内して。
 

S.T.Y.X.研究所 – 管制室

オペレーターA非検体H、I。
カローンと共にシミュレーションルームに入室。
魔力測定ギア、各被検体に装着完了。
オペレーターB各種データ計測準備完了。
ヒトサンマルマル、記録を開始します。
イデアあー、テス、テス。こちらオペレーティングルーム。
拙者の声聞こえてます?
マレウスああ、聞こえている。
リリア何度見てもこの技術はすごいのぉ。装備も変化して
おるし、触れた質感すら本物さながら。
このVRヘッドセットを使って
FPSゲームなどをプレイしたら大迫力じゃろうな。
イデア……リ、リリア氏ってFPSとかするんだ。

いや、今はそんなことよりテストテスト……。

メインストリート

イデアそれじゃあ、まずはマレウス氏……
全力で氷系の魔法を使ってみてくれる?
こっちがもういいよっていうまで出力し続けて。
マレウス……僕が全力を出したら、
施設を破壊してしまわないか?
イデアフヒッ!
『神々の時代』からファントムを閉じ込めてきた
『S.T.Y.X.』の技術をナメないで欲しいっすな。
遠慮なくどーぞ。

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